「……ほんに、ええがか?」


坂本が部屋を去ったあと、残った以蔵は尋ねた。


矢央と過ごしたのは、新選組と比べて浅く短い以蔵であったが、少なからず分かったことがある。


「本当は、奴らとおりたいんじゃないがか」


矢央が新選組の話をする時、悲しさのなかに愛しむ気持ちが混ざっていることは以蔵も気づくところ。


矢央は何よりも、新選組を愛しているのだろう。


なのに、何故(?)と。


「……決めたことがあるんだ」


もうそろそろ夜が明けるのか、遠くに見えた空に白みがかかっていた。


「私は、私を信じるんだって」

「自分を?」


空を見つめる矢央が、以蔵は少し遠くに見えた。


「うん。 自分を信じるの」


今一理解に苦しんだ。

己を信じることは良いことであるが、今はそういったことを聞いているのではないのに、と。

だが以蔵は、それ以上深く追求するのは止めた。


矢央自身が此方にいると決めたのだ。

ならば己は、それを尊重しようではないか。


「大丈夫ぜよ。 おまんは、わしが守ってやるき」

「以蔵さんが?」


外から以蔵に視線を流し、真剣に頷く以蔵を見て、心強く思う。


「ありがとう。 私も守るよ」


みんなを守るよ―――……


.