「そういえば、どうして私の事?」

「ん? だから、運命」

「それは置いといてっ!」

「参ったな。 あまり深く説明は出来ないんだけど」



言葉では困っていても、桂の態度はあまり困っているようには見えない。


矢央は、はぐらかされまいと、ジッと桂を見上げていた。


「……俺は、坂本君の友人だよ。 だから安心しなさい」

「じゃあ、坂本さんから聞いてる?」

「君のことをかな?」



視線を逸らすことなく、コクンッと頷く矢央。


ニッコリと笑みを浮かべながら、桂は暮れ始めた夕空を見上げる。

長い黒髪を掬いとき、流し目で見つめて来た桂は独特な雰囲気を醸し出していた。


「変わり者の娘を、新選組から救い出したい。 と、だけ聞いてるよ」

「変わり者って……。 ほ、本当にそれだけ?」


疑り深い矢央。


桂は、ただひたらすら笑みを崩さずだった。

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