――元治元年、1864年。

矢央が新選組屯所から姿を消し、早、三カ月が過ぎた。


年が明けた新選組では、いつもと何ら変わりなく仕事は尽きない。

そして相変わらず、矢央の消息が掴めないと焦る幹部達は酒を飲み交わしながら会議を開いていた。


「矢央君がいなくなり、三カ月も経つのか。 早いな」


ボソッと、近藤が呟く。


その呟きに声をかける者はいない。


「正月だというのに。 矢央さんも、何処かでこの月を眺めているんですかね?」

「総司……。 きっと見てるさ。あいつは、簡単に死ぬ玉じゃねぇだろ」


月明かりの下、苦手な酒を飲みながら縁側から月を眺めている沖田も、やはり矢央を気にとめては巡察の度に聞き込みをしている。


沖田の複雑な心境も気がかりな永倉だが、沖田と少し距離を開け縁側に腰掛け、此方に至っては輝かしい月を眺める余裕もないくらい見るからに落ち込んでいる藤堂も気になった。


矢央がいなくなった理由は分からないまま。

消息も掴めていない。


最後の姿を見た原田と、原田を攻めた藤堂の関係は、今まで通りとまではいかないが戻りつつある。


攻めることで、藤堂の気が紛れるなら構わないと原田は無抵抗を続けた。

結果、藤堂が折れた形になる。

原田を攻めるのは違うと。 そうなってしまうのではないかと予期できた。

なのに、何も出来なかった己こそ情けないと呆れた。


「平助、ほら飲め飲め!」

「……新八さん。 悪いけど、そんな気分じゃないや」


酌をしようと差し出した手を、やんわりと退けられてしまい、永倉は困ったと頭をかいた。


.