「坂本さんが忙しいのは分かってるよ。 だけど、私一人でも大丈夫だよ」

「それはいかんぜよっ! 今の元気のないおまんを、一人にするんは忍びないき。 以蔵はな腕が立つが、感情がイマイチあれなんじゃ…」

「龍馬っ! なんかわしは、悪く言われてないがか?」

「いやいや、以蔵は少し黙ってるぜよ! な、矢央? 京を出歩くなら警護に以蔵がつく、そしておまんは以蔵に色々教えてやってほしいぜよ」


矢央の両手を握り込むと、坂本は以蔵や龍に聞かれないために矢央に顔を近づけた。


「あとな、もし新選組に出会したら以蔵を逃がしてやってほしいぜよ」

坂本の狙いはそこにあった。

一斬り以蔵を見つければ、新選組は問答無用で斬りかかってくるだろう。

だがそこに矢央がいれば、多少の隙が生じ、その間に以蔵を逃がしてくれと頼んでいるのだ。

矢央は、坂本の友を救いたい気持ちに惹かれた。

以蔵を見ると、よくわからないといった顔をする以蔵に笑いかけると、以蔵は赤くなって視線を逸らした。


「わかった。 その時……多分、私も決め時だと思うしね」


意味深な言葉を残しつつ、矢央は暫く坂本の世話になることを決めた。


その間に、己がやらなければならないことを探すと決意して。

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