「失礼しますよ」

「おおっ! 帰ってきたぜよ!」

「龍馬さんの言い付け通り、着物を買ってきました」


淡々と話す女性は、矢央よりも年上で落ち着いてみえた。

坂本が邪魔になり姿がよく見えないと、矢央は体を傾けた。


チラッと合った視線。

美しい女性だった。 キリッとした眉や目、通った鼻筋、坂本の言った通り矢央とは違う魅力的な女性だ。


「すまんかったの。 ほれ、矢央! おまんの着ちょったもんは、ボロボロやったき新しいもんを着るとええ!」


女性から着物を受け取った坂本は、興味津々と女性を凝視する矢央に気付き、女性と矢央を交互に見やる。


そして、ポンっと手を叩き豪快に笑った。


「なんや矢央、おまん女子が好きなんか? そりゃあ、いかんぜよ! 美しいもん同士がくっつくんは、勿体無いきに」

「……なにバカ言ってんの」

「そうですよ、龍馬さん。 冗談は顔だけにして下さい」

「酷い言われようじゃ。 なぁ、以蔵? こんな男前を前にして」

呆れかえった矢央や女性から冷めた視線を投げつけられているのに、坂本は笑顔を絶やさない。

その隣では、代わりに以蔵が身を小さくして震えていたのだった。



この二人、見た目は違うけんど、怒らせたら怖いんは同じぜよ……!



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