駆け抜けた少女【完】


坂本にそれ以上言うなと睨まれた以蔵は、叱られた犬のように大人しくなった。


矢央の言っている事が綺麗事であることは坂本にも分かるが、だがしかし、その綺麗事こそが坂本も実現したいことの一つでもあった。


同じ日本の民が、醜い争いなどして何になる。

知恵を出し合い協力しあい、日本をより良い未来へと導きたい。

弱い者が虐げられる現状など醜いだけなのだ。

だからこそ、矢央のような考えは浮いてしまう。


「……以蔵さん、でしたっけ?」
「……なんぜよ」


可哀想な者を見るような目を向けられた以蔵は、立場をなくしたように縮こまっていた。


「あなたも大切な人を守りたいんでしょう?」

「……っっ!?」

「そんな顔してたよ。 守りたい、けど守れなかった……」

「おまんに何が分かるっ!」

「以蔵っ! もう、ええ加減にするぜよっ!」


以蔵もまた、坂本同様に守りたいものがあった。

頭も良くない以蔵には、坂本のような日本の未来を考えて行動するなんてことは出来ない。

が、純粋に仲間を慕って着いて行った過去があった。


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