「……あの子は必死になって生きてたんだよ! 何も考えてないわけじゃねぇし、立ち向かってなくもねぇじゃん! あんたはそれを分かってると思ってたっ……」


永倉の腕を払いのけ、グッと握り拳を使った。

芹沢の死後、矢央は必死に立ち直ろうとしていたのだ。

周りから見ても分かる程に必死だった。


必死すぎて痛々しかった。


そんな矢央を原田も気にかけていたはずなのに、どうして(?)とやり場のない苛立ちを床に殴りつけた。


しかし原田に苛立ちを感じているのは藤堂だけだった。


「平助、いい加減にしろ」

「なんでだよっ! 新八さんは、矢央ちゃんが心配じゃねぇのっ?」


胸ぐらを掴まれながらも平然とする永倉は、落ち着けと宥め続けた。


それは怒って喚き暴れようが解決する問題ではないと分かっているからだったが、まだ若い藤堂はただ少女が心配な気持ちを隠すことが出来ないのだ。


「藤堂さん、私達も心配ですよ。 彼女は行く宛も無いんです。 だからこそ、私達が冷静でいるべきではないですか?」


そう言ったのは、沖田。


何かと矢央とぶつかる沖田も、矢央が姿を消したとなれば心配になる。

彼女を追い詰めた原因は自分にもあると、長い睫を伏せた。


「そうだぞ、藤堂。 何かに巻き込まれたのかもしれんし、誰かに匿われただけかもしれん。 何にせよ、まずは行方を捜すことが先決であって、仲間割れをしている場合ではなかろう」

「近藤さん……。 ごめん…」


皆に窘められ冷静さを取り戻した藤堂は、素直に謝罪した。

そんな藤堂に優しげな笑顔を向けていた近藤は、ピシッと顔を引き締め隣で難しい顔をしていた土方へと視線を向けた。


.