駆け抜けた少女【完】


一人残された矢央は、心にぽっかり穴があいたような気分になった。


取り残されて行く。

時代からも、仲間だと思っていた人からもはみ出されていく。

どうしてこうなった?


原田の言ったように、分かる努力を怠っていたのだろうか。


しかしそれは、"死"を受け入れろと言われたようなものだ。


死を当たり前のように扱えというのだろうか、と矢央はやり切れない思いに駆られた。


――分からない。

――理解したくない。

――考えたくない。

――逃げ出し……たい。


自身が背負ってしまった運命から、何もかも忘れて逃げてしまいたい。


「…も、疲れたよ……」


ふと、一瞬だったが物音がしたような気がして、矢央は楠の亡骸に目を向けた。

また助けられなかった命。

と、思った刹那―――……


「……ん……」


ほんの僅かだったが、まだ息をしている。

ハッとして、矢央は倒れていた楠を助け起こした。


「楠さんっ!? 楠さんっ!」

「んっ……ガハッ!」


膝の上に抱えると、ゼッゼッと切れ切れに浅い呼吸を繰り返す楠にホッと息をついた。


もしかしたら、まだ間に合うかもしれない。

そう思った矢央は、原田に刺された脇腹に手をあてがう。


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