「数日寝っぱなしだと思えば、次は寝てねぇらしいな?」


アホ丸出しなボケをかました矢央の首根っこを鷲掴み、無理矢理部屋へと連れ込んだ土方。


連れて来られたことに不服を感じているらしい矢央は、ずっとブスッと頬を膨らませていた。

「寝てますよ」

「どんくれぇだ?」

「………」

「夜は布団から抜け出し、勝手に道場で一人稽古してるっつー裏もとれてるぜ?」


ニヤリと口角を上げた土方は、ますますブスッとする矢央に呆れながら煙管を吹かす。


口から吐き出された紫煙が、もわんと天井に浮かび上がった。

「寝るのを嫌うのは……」


一旦言葉を区切る。

また紫煙が立ち上った。


「夢にでも魘されるか。 それとも誰かに魘されるのか」


矢央は膝に置いた拳を更に深く握り締めた。


爪が皮膚に食い込みギリッと鈍い音を発する。


「何も言わないのは固定したことと同じだぜ」

「……ッ……」


澄んだ風が室内に流れ込む。

この重苦しい空気を吹き飛ばすくらいの風が入ってくればいいと思った。


「苦しいか?」


驚き眼を見開く矢央。

この優しい声色は、あの土方から発せられたものか(?)と疑った。

しかし、この部屋には二人以外は誰もいない。

ならば土方なのだろうと、矢央は戸惑いに満ちた眼を土方に向けた。


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