あまりにも自然過ぎる光景に、皆頭を傾げていた。


新選組となって数日後、矢央は変わった。

否、変わったのではなくいつも通りすぎて逆にそれが不自然に映るのだ。



「あーっ! 藤堂さんっまた汚したっ!」

「またって言われたって、巡察中に怪しい奴見つけたらやるしかないじゃん!」


巡察から帰隊した藤堂の隊服を掴み、たった今洗濯物を干し終えたばかりの矢央は激怒する。


水滴を払うために井戸に立てかけた桶を見ながら、はあと溜め息を吐いた。


「血は落ちないんですよ。 そうして、また新しい隊服を買うお金が勿体無いって思いません?」

「うーん。 でも、これで食えてるわけだし」


開き直る藤堂をギッと睨む矢央。

頭に置いていた両手を咄嗟に起立の体勢に持っていく藤堂。


どちらが年上が分からない。


「おやおや、今日怒られいるのは藤堂君かい?」


困り果てていた藤堂に助け舟。

散歩から帰って来た山南だった。


穏やかな表情だが、矢央を見る眼は何処か悲しげである。


「藤堂さんも、山南さんを見習うべきです」

「ん? 何故、私を?」

「だって……山南さんは、血を浴びないもの」


瞬時に表情を曇らせた矢央。

山南と藤堂の胸は痛んだ。


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