着流しに幾つもの皺が寄った。

沖田の眉間に皺が寄り、険しい表情だ。


「……信じるとは、どういうことですか?」

「どちらを選ぶかっつぅことだ。 もしもまた、あいつが現れた時、お前はどちらにつくかだよ」

「それは……」


永倉さんは決めているのですか? と沖田は顔を上げたが、言葉にはしなかった。


尋ねずとも分かったからだ。


永倉は過去を振り返らない。


今、目の前にあるものだけを見ると。


「お前も辛い事は承知の上だ。 だかな、こいつはそれ以上に辛いはずだぜ」


平和な世で暮らしていたはずの少女が、一方的に動乱の世に一人連れてこられた。

何を信じ何のために生きればいいか、未来に戻れる宛もなく不安を抱えたまま懸命にこの時代を生きようとしている。


「こいつは正直に言っただろ。 自分を自分として見てほしいんだってよ。
いつも笑ってるけど、俺にはあん時の矢央がいつもついて回る」


信じてほしい。

間島矢央として、此処に置いてほしいと泣いて訴えた少女。


「笑顔の裏に、俺には到底想像もつかねぇ不安や悩みを隠してんじゃねぇかってな。
けど、こいつはそれを小さな躯に必死んなって隠してる。
健気だと思わねぇか……」

「……思いますよ。 ひたむきで健気で……無理をさせているんだろうと、いつも思ってますよ」


だが矢央に対する感情よりも、沖田の心にはお華に対する罪の意識があった。


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