薄暗い部屋の片隅に、未だに眠ったままな少女。


原田に連れ出された後の矢央は大変だった。

山南が宥めようとすれば、腕に噛みつくは引っ掻くはと暴れるのを止めない。


叫んで泣いてを何度も繰り返し、ようやく眠りについたのは翌朝だった。


それからも目覚めては暴れての繰り返し。


矢央は芹沢の葬儀にも顔を出すことはなかった。



「どうです? 矢央さんは」

「…どうもこうも相も変わらずだ」

「そうですか……」


昼だとまだ暑い京の町。

開け放たれた障子戸の前に座った沖田は、眉を下げながら眠る矢央へと目線を落とした。


「凄い腕ですね、永倉さん」


暫く矢央を見た後、沖田は永倉に視線を移す。

立てた膝の上に投げ出した腕には、無数の爪痕がある。


「起きる度に引っ掻かれるんじゃ傷も治りゃしねぇ」

「………」

「心配すんな。 こいつは、きっと立ち直るさ…今は辛抱の時だ矢央も総司も」

「……ハハッ。 辛抱ですか」


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