「お華、あなたはなんてことを……」

「惣司郎君。 あなた達の進む未来……必ず私が守るから」



ニコッと甘く微笑む君は、本当にお華なのか疑わしい。


お華は虫さえ殺せない穏やかな性質だったのに、芹沢を躊躇いなく刺した。


だがそれは矢央とて同じだ。

矢央に至っては、殺し身近にない場所で生きてきたのだから。


「どうして……」

「ごめんなさい。 もっと、あなたの傍にいたいけど、時間がないの。 名前を呼んで? 私に力を下さい、惣司郎君」


しなっと沖田の胸元に頬を寄せるお華。

沖田の名前を何度も呼んだ。



沖田の胸がギュッと締め付けられた。

細い肩を強く抱きしめ、「お華…」と愛しい名前を口にした。

「ああ…会いたかった。
またこうして、あなたに触れられるなんて」

「…お華っ……」


矢央が流した涙の跡を新しい涙が伝う。

歓喜に満ちた喜びの涙を、沖田は指の腹で優しく拭った。


愛しむ者同士、暫しの時を過ごすが、それも長くは続かない。

「必ず、また会いにきます。 だからどうか、忘れないで」

「お華っ、忘れるわけがないっ。 私は、私はあなたを……」

「総司っ!!」


土方の呼び掛けに、沖田は今おかれる状況を思い出した。


「土方さん……」

「さっさととどめを刺せ」


刀で芹沢を指す土方。

振り返れば、最後の力を振り絞り起き上がろうともがいている。

惨めに見えるその姿も、生きようとする者の力なのだ。


最後を、自分が――――…



「…っぅあああああああっっ!」
「お華っ?」


腕の中で叫びだした少女に驚く。

刀を片手に握り締めながら、もう片方で暴れる少女を支えた。


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