お華は消えていなくなり、あとに残ったのは抜け殻のような己だけ。


「追わなくていいのか?」


暗闇の中からスーッと白い顔が現れ、廊下に座り込む永倉を見下ろした。


「……追ったところでどうなるってんだ」

「どうもならんだろうが。 下手をすれば………死ぬぞ」


ピクッと、投げ出された永倉の手が動いた。



そうだ。 矢央は暗殺現場に向かったのだ。

誰にも知られてはならない、誰にも見られてはならない。


だからこそ暗殺なのだ。


そこに矢央が向かったとなれば、それを目撃してしまう。


土方は、目撃してしまった矢央をどうするだろうか。


「……情けねぇよな」


永倉はヌッと現れた斉藤に溜め息混じりに零す。


情けなくて泣けてくる。


全てを見抜いていながら、自分には何もできない歯がゆさ。


「俺は半端者だ。 どちらにも付ききれねぇ。 半端者なんだよ……」


初めて聞いた永倉の弱き発言。

斉藤は何も言わなかった。


止められない。

それは己とて同じ、土方達とて同じなのだから、と――――



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