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「トイレ、トイレ―…と」
厠に向かうため一人大広間を出た矢央は、ふと見知った声に足を止めた。
この声は、土方さん?
そういえば大広間に土方の姿がなかったと思った矢央は、何をしているのかと角から顔を覗かせてみた。
土方と、もう一人いた。近藤だ。
二人は向き合って、声を潜めて何やら話している様子。
「そろそろか」
「ああ。 ひとまず俺が連れて帰って、戸を開けておく」
戸を開けておくとは、何のことかわからない。
土方が帰るならば、矢央も一緒に連れて帰ってもらおうかと考えていると、二人の話は確信めいてくる。
「歳よ……」
「ん?」
「本当に、これでいいと思うか? こんなやり方しか俺達にはできないのか……」
眉を寄せ苦痛な表情を見せた近藤に対し、土方は相変わらず何を考えているかわからない。
「……これでいい。 近藤さん…かっちゃんは、胸張ってりゃいいんだよ。 新選組という新たな名を貰ったんだ、新選組に芹沢はいらねぇ」
「うむ……」
「これから芹沢をやる。 そして、俺たちゃ新たに新選組と名乗る。 そして、歴史に新選組の名を残してやるさ」
ふんっと鼻を鳴らした土方は、近藤に背を向け歩き出す。
矢央のいる方へと歩いてくる土方。
しかし、矢央は壁に張り付き動けないでいた。
……芹沢さんが、ヤられる…。
ギシッと廊下が軋む音に、早く知らせなくては思うのにガクガクと膝が泣くので動けない。
土方が、もうそこまで来ていた―――その刹那。
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