駆け抜けた少女【完】





雨が強くなってきた、と誰かが呟いた。


「さあさあ、今日は思う存分楽しんでくれ!」


島原角屋での宴会が始まって一時間余り、芸妓総出の奮発した宴会となった。


「矢央ちゃん、緊張してる?」


ガヤガヤと騒がしい大広間の隅っこで永倉、矢央、藤堂の順に座り、先程から喋ることなくチビチビと箸を伸ばしている矢央を見かねた藤堂は話しかける。


「なんだぁ、お前確か以前島原にやけに興味持ってたわりに大人しいじゃねぇか」


そうからかうのは永倉だ。

矢央がこの時代に来た頃、やたらと島原に出向く永倉と原田がいて、島原とは何をする場所だと永倉に尋ねたことがあった。

ようやく島原に来れたというのに、矢央の表情は硬い。


「……みんな、鼻の下伸びてるし」


ぐるんと大広間を見回して、そう発した矢央。


藤堂は苦笑いだ。



「アハハハ。 そりゃあ男だからさ……」

「じゃあ、藤堂さんもお酌してもらえばいいじゃないですか」


自分とは違う、大人っぽく艶のある女達が隊士達に寄り添い接待する光景を見て、さすがの矢央も永倉が言っていたことを理解した。


"女が来る場所ではない"


それは女の自分がいくら大人になっても、楽しめる場所ではないということだったのだ。


事実、女達と愉しげにしている見慣れた隊士達を見て「男って…」と不機嫌になっている。


「いや、僕は……」

「へ〜すけ〜。なんだぁなんだぁ? いつもなら二.三人はべらかせてやがんのに今日は一人か! ガハハハ!」


はあ…と、盛大な溜め息を吐きながら頭痛を覚えた藤堂。

からかうのは、自身が女四人を傍らに置く原田だ。


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