"好きにしろ"と言われたあの時、矢央は突き放されたような気がして胸がいたかった。
怒られる方が増とさえ思えたくらいだ。
あれから何度か永倉と話そうと試みたが、最近の永倉はいつも何か考えているのか神妙な顔つきで近寄りがたかった。
だがこうして誘ってもらえたのだ、矢央は永倉との蟠りを解いておきたかった。
永倉にも仲間として認めてほしかった。
「永倉さんが心配してくれてるのは、本当にありがたいって思います。 入隊するのは、確かに不安だし怖いし……だけど、一人で待ってる方が怖くて……」
皆が任務に出掛ける度に、矢央はひたすら無事に帰ってくることを願って待っている。
いつか壬生浪士組が新選組と名を変える日が近いのも分かっていた。
だがそれは、知識の少ない矢央にでもわかる程、彼らにとって危険な時代がやってくるということだ。
今接してくれる彼らが、いつどこで危険な目に合うかもわからない。
もしかしたら、明日にでも誰かがいなくなるかもしれない。
「私には何も出来ないかもしれない。 でも、誰よりも近くで見守りたい…。 ずっと、ずっとみんなで笑っていたいから…辛くても傍にいる方法を選んだんです」
胸の前に握られた小さな手が、微かに震えていた。
上手く言葉に出来ない想いを必死に伝えた。
一番傍で見守りたい、と。
「わかったよ。 お前の気持ちは」
ポンっと、骨ばった大きな手が矢央の頭を優しく撫でた。
「ただ腹を括ったからには、約束してもらおうか」
「約束……?」
見上げてくる純粋な双眸には、真剣な表情の永倉が映る。
お互いに、真っ直ぐ見つめ合っていた。
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