駆け抜けた少女【完】



「永倉も聞いてるな?」


障子戸に背を預け、見下ろすように永倉に問う土方。


「宴会のことかい? それとも、また別のことかい?」


重たい空気。

最近の永倉は、やたら浮いている。


近藤や土方に少なからず不信感を漂わせているのが、ありありと分かる。


永倉がそれを隠そうともしないからだろう。


土方はピクリと眉を動かした。


「宴会以外に、何があるってんだ」

「さあね。 副長方なら知ってるんじゃないですか? 俺は……全く聞かされてないんでね」


語尾をかなり強調する。


土方は一瞬押し黙ったが、直ぐに妖しい笑みを浮かべた。


トンっと、永倉の肩を叩き


「そうだ。 永倉は、間島といてやったらどうだ?」

と、話題を変えてきた。


「何せ島原は初だし、酒も入る席だ。 間島を気にかけてやってるあんただ、もちろん面倒を見てやんだろ? なあ?」


…はっ。 そういうことか。 とことん俺を遠ざけたいってわけだな。


永倉は不安気にこちらを伺っている矢央に視線を向けた。

瞬間、またピクリと肩を震わせた矢央。



『仲直りしたらどうですか?』



キョロキョロと目線を泳がす矢央、小さな体を一層縮めて、足の上に丸めた拳をぐっと押さえつけている。


フッと、永倉の強張っていた表情が和らいだ。


「矢央」

「は…はいっ!?」

「平助…ンとこに一緒に行くか?」


ポカーンと口を開けた矢央。

久しぶりに永倉が誘ってくれていると知り、次第に嬉しさが募る。


ニコッと愛らしい笑顔を浮かべ、大きく頷いた。


「……じゃあ、そういう訳だ。間島を頼んだぜ」

「……はいはい」


土方が隠そうとすることは分かっている永倉は、それ以上追求するのは止めにした。


何故なら、土方の目が語っていたから。


"お前らは関わるな"と。



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