*
「え、島原ですか?」
昼食を食べ終わった矢央に、土方が声をかけた。
この後、今日の仕事は全て無しにして皆を労うための集まりが島原の角屋で開かれる。
それに、矢央も参加しろと土方は言ったのだ。
「最近のお前は、女中の手伝いもして頑張ってるからな。 それに丁度良い、お前の入隊を報告する」
「……だから、雨が降るんだ」
眉を寄せて、先程から降り出した雨は土方のせいかと恨めしく見つめた。
これでは溜まっている洗濯が出来ないではないかと。
「あ? てめぇ、俺の好意を素直に受け取れねぇのか」
真っ黒な着流しをはだけさせ、逞しい胸板からお腹まで恥ずかしげもなく見せる土方を、じーっと観察した後、矢央はわざとらしい溜め息を吐いた。
「なんだ?」
「土方さんの好意を素直に受け取ると、何かに汚染されそうで……」
「ああ?」
「いいえー、なんでもないです」
寝起きらしい土方に、これ以上口答えすると雨だけではなく雷まで落ちそうだと、矢央は首を左右に振った。
そこへ、廊下からやって来た永倉が部屋を覗く。
――――ビクッ!
……永倉さん。
永倉の視線は矢央ではなく土方に向いている。
両者共に無表情で、まるで睨み合っているようで、傍らで見守る矢央は更にビクビクするのだった。
.



