「……ねぇ、永倉さん」
「……なんだ?」
立ち上がり庭に下りた沖田は、カコンと下駄を鳴らした。
艶のある黒髪が風にサラッと揺れていた。
「どうか矢央さんを支えてあげて下さい」
沖田の細い背中を、横目に見つめる永倉。
その視線に気付いているものの、沖田は振り返らなかった。
否、振り返れないのだ。
永倉の自分を見る目が痛々しくて。
今夜彼女を支えてあげられるのは……きっと同じ想いを抱くあなただけだ。
「……今夜なのか?」
永倉は低く声を発した。
何かを確信したのだろう。
「何のことでしょうか? あっ! そういえば、今日は近藤さんが日々の労いだと宴会を開かれるようです。 永倉さん、矢央さんを誘ってあげて下さいよ」
話をはぐらかし、良い提案をしたとばかりに笑顔で振り返った沖田。
しかし、やはり永倉の目を見ることはなかった。
「日々の労いね――……」
「はい。 隊士想いですから、近藤さんは」
永倉は、何も言わなかった。
沖田も、それ以上は何も聞くなと顔が語っていた。
ポタポタ…と、沖田の肩に数滴の水が染みを作った。
顔を上げた沖田の頬が濡れていく。
「………雨か―……」
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