時同じくして、沖田は祇園新地の料亭山緒を訪ねていた。



芹沢鴨を暗殺するにあたり、土方は芹沢の抵抗を無くさせるため芹沢の配下を一人ずつ抹殺する計画に出た。


まず最初に、芹沢の右腕である新見を亡き者にするため、最近新見が入り浸っている山緒に沖田を向かわせたのだった。


「……何ようだ」


「新見さん、あなたは度々商家に押し入り軍用金と称し金子を巻き上げ、その金を遊ぶ金へと流し隊務を怠ったと見なし、あなたに切腹を申し付けに参りました」



酒を煽る勢いが弱まった。

薄暗い室内で、新見の顔だけはやけに白く見えた。


「……どういう意味だ」

「局中法度をもちろんご存知ですよね」

「ああ…」

「士道に背くまじき事、勝手に金策致すべからず。
これらに反するとして、この場で腹を切らねば、私があなたの首を斬らせて頂く」


沖田の綺麗すぎる程の顔が、新見の恐怖を煽る。

無表情で新見に刀を突き付ける沖田。


「さあ、あなたも武士ならば覚悟をお決めなさい」

「…っこの」


新見はこんな場所で死んでたまるかと、刀を手に取った。


―――が、既に読まれていた新見の動きに沖田は素早く反応し、鞘からギラリと不気味に輝く刃を出し、新見の首元に当てている。


一歩でも動けば斬る、と気配で語っている。



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