「新八さん、機嫌直しなよ」


頭をかきながら、斜め横の永倉の様子を伺う。


が、永倉は思いつめたような溜め息を吐き捨てた。



「……もう、腹立ちすらしねぇや。 第一、土方さんに何を言おうが聞く耳持たずじゃな」

「確かに、僕だってどうかと思うよ? 壬生浪士組に女の子が入るなんて異例だし、危険も増えるし」


土方の言葉に直接的に異論を唱えなかったのには、藤堂なりの訳があった。


矢央がいれたお茶を見つめ、湯呑みに手を添える。


ゆらゆらと揺れる湯気を視界に捉えながら、藤堂は言った。



「でもさ、このまま矢央ちゃんを理由もなしに此処に置くのも限界があると思うんだよね。
みんな、大切な人を里に残して命を懸けて壬生浪士組に入った。
なのに、僕達幹部一部だけの個人的贔屓だけで匿うことは、いつか反感を買う気がする」


「平助……」


藤堂は、複雑な笑みを浮かべていた。


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