土方は山南を睨む。


「実際に髪を切り落としたのは、君と永倉君だろ」


吉田屋に芹沢と同行した人物は、意外にも土方と永倉だった。

二人が同行したのは、芹沢を止める目的があったのだが上手くはいかず苦虫を噛むはめになったが、土方にすれば、これも好機かとも思っている。


悪いことを収めるために、これで上が動くだろうと考えているのだ。



「君は、まるで狐のようだよ」

「どういう意味だ」

「ずる賢い。 人相にも現れているじゃないか。 これも、君は好機と捉えるのだろ? 君にとって邪魔でしかない、あの人を追い払うための」

「…………」



副長同士である土方と山南はあまり仲が良いとは言えない。


元々の考え方が違った。


争い事を嫌う穏やかな山南には、這い上がるためならば何でもする土方のやり方が気にくわないのだろう。


「二人共、止さないか。
今は仲間内で揉めている場合ではなかろう」


険悪な睨み合いの仲裁に入った近藤の表情も硬かった。


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