沖田は暫く黙ったまま、膝の上で握られた手を見つめていた。
瞬きを一度。
「あなたは、本当に不器用なお人だ」
「……ああん? 何が言てぇんだ」
ぶっきらぼうな土方。
不器用すぎるだろと、沖田は微笑する。
「どうして素直に、彼女を守るために傍に置きたいのだと言えないのですか。
あんな言い方だと、要らぬいざこざを招くだけですよ」
「フンッ。 柄にねぇことはしねぇ主義だ」
土方は優しい。
本当は仲間想いだ。
だが、不器用にしか人を愛せないのが土方歳三という男だった。
沖田は、そんな土方だからこそどこまでも着いて行こうと決めたのかもしれない。
「これから、我々も彼女達もどの道を歩んで行くのでしょうか――……」
淡く灯す行灯の明かりが風に揺れ、土方、沖田の影を揺らした。
そして、文久三年九月。
壬生浪士組に吹く風は、急速に増して行く―――――――
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