身構える矢央。

矢央は真実を知り、戸惑いながらも決心した。


お華を信じてはならない、と。


「そう……残念です」


俯いたお華の髪が、刹那、バッと宙を舞った。



「うそっ!?」


ギョッと目をひんむいた矢央が見たものは、お華の髪が刃のように鋭くなったもの。


有り得ないだろ、と唇を吊らせる矢央は呑気に考えていた。


(本当にファンタジーな世界ね…)


鬼や妖の類を思い浮かべていた矢央に向かって、刃と化したお華の髪が襲いかかる。



―――――ガッッッ!


「どわっ!!」


間一髪避ける、なんてかっこいい結果にはならず、僅かに矢央の腕を掠めている。


刃が掠めていった腕からは、布を裂き赤い血が僅かに滲んでいた。


「……っ……」


痛めた腕を押さえ、体勢を整えながら、やはり距離をとろうと後ずさる。


得体の知れないものとの戦い方など教わっていないが、どちらにせよ矢央は戦いを好まないので、端からお華と戦う気すらなかった。



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