お華が矢央を選んでいなければ、矢央は祖父や父母と共に過ごし、学業と仕事を一生懸命やり友達と青春を味わっていたはずだ。


更に先の未来には、彼氏が出来て結婚して子を授かり巣立つのを楽しみながら見守っていただろう。


その未来を、お華は自分のエゴのために無くしてしまった。


確かに、お華同様の力が矢央にはあった。


しかし、それすらお華が関わらなければ目覚めなかったのだ。

「これは……運命なんかじゃない。 あんたがっ…あんたが勝手にやったことじゃないっ!」


廊下に散らばっていた洗濯物をお華に向かって投げるが、それはスカッとお華をすり抜けてしまう。


グッと唇を噛み締め、大きな瞳に涙を溜め込む矢央。


悔しくて、悲しくて、言いようのない苛立ちがあった。

自分が醜くなるほど、お華を恨む気持ちが溢れて止まない。



「……なら、どうするの?」

「え………?」


お華は異様なほどに冷静だった。


矢央の想いなど、どうでもいいかのように。



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