笑顔のお華に恐る恐る手を伸ばす。
―――スカッ……
透けてなどいない、確かにお華はそこに立体的に存在しているのに、矢央の伸ばした手は空気しか掴めない。
困惑する矢央に、今度はお華が白く細い手を伸ばした。
「私は存在しないから……ほらね、触れることはできないの」
矢央の頬に触れているはずの手は、スルッと突き抜けて行き、悲しげに微笑んだお華は庭に顔を向けた。
雨が、ぽつりぽつりと降り始めていた。
「私は幼少時代から、人や物に触れると、ほんの少しの未来を見ることが出来たの。
それに気づいた時、出来るだけ触れるのを避けて来た……愛した人達の辿る未来を先に知るのではなく、共に歩み共に見つめたいと思ったから」
お華は、本当に語り始めた。
これでやっと全ての謎がわかるんだと、矢央は真剣に話を聞いている。
「でも、未来を知ってしまったのに…助けることが出来ない人もいた。
祖父は私を心配し、自分が亡き後を勇さんに託して逝ってしまった……。 祖父の未来は知っていたのに、何も出来ずにいた自分が悔しかった。
それからは、避けていた未来を進んで見るようになったのだけど、私が愛した人達の辿る未来は見るのが苦しいものばかり」
愛した人達とは、近藤達のことだ。
そして、辿る悲し未来とは、新選組が辿る未来だろう。
矢央も個人がどうなるかは知らなくても、新選組が幕府がどうなるのかくらいは知識にある。
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