「ねぇ〜、もう止めようよぉ!」
耳を塞いで泣き声混じりで矢央が懇願する。
押し入れから布団を取り出して、一人だけくるまった状態で話を聞いていた。
部屋の中心に一本だけ蝋が灯されている。
回りを囲むようにして座ったかと思えば、始まったのだ……。
「あれは、俺がまだ十四の時だった。 父上と稽古の後家に向かって歩いていると、一人の婆ちゃんがこっちに向かって歩いて来るのが見えた……」
怪談話が始まるなり、矢央はガタガタと震える。
苦手だった、目に見えないものは信じられないタイプだ。
幽霊なんて今までみたことがないから、いないと信じる十六歳である。
お、お華さんは…夢の住人だしっ!
誰に聞かれたわけでもないのに、自分に言い聞かせる。
「おかしいと気づいたのは、その婆ちゃん傘をさしてなかったんだ。 外はどしゃ降り、気になって俺は婆ちゃんに声をかけることにした」
怪談話をしようと持ちかけた張本人である原田は、神妙な顔つきで手振り身振りで話を続ける。
矢央は、既に恐怖の絶頂。
男達は、まだ平然としている。
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