駆け抜けた少女【完】


笑いの止まらない原田を押しのけて、永倉が廊下に出ると月を見上げている。


後ろでギャーギャー喚く声を聞きながら。


「許してやんな。 お前が心配してくれたように、左之だって心配してんだよ」


ピクリと矢央の肩が揺れる。


「左之だけじゃねぇ、最近お前が元気ねぇって…平助なんか、稽古に身が入らねぇ始末だ」


月明かりを浴びながら振り返った永倉は、シュンと俯いた矢央の頭に手を乗せた。


クシャリと撫でる仕草は優しい。


「心配するもんの気持ちがわかんなら、ちぃったぁ話してみねぇか? 一人で塞ぎ込むのは、お前らしくねぇだろ」

「…………」


グッと唇を噛む。


芹沢の件から考え事をしていたせいで塞ぎ込んでいた。

まさか、そんな自分に気づき気にかけていてくれた人達がいたなんて。



「そうだよ、矢央ちゃん言ったじゃん。 自分を受け入れてほしいって…矢央ちゃんが隠してたら意味ないじゃん?」


「永倉さん、藤堂さん、原田さん、井上さん……」


ゆっくり視界を上げた矢央は、優しく微笑む男達を見回した。


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