近藤らが騒ぎを聞き大和屋にかけつけた時には、大和屋の蔵は火の達磨。


そして、火花が舞う中に芹沢は立ち更に隊士らを煽っては、また火を放つ暴君ぶりを見せていた。


主は、頭を抱え地に膝を折っている。



「芹沢先生っ、このような事はお止め下さい!」

「近藤君、君は浪士組が愚弄されても笑って見過ごせると申すか?」

「それは……」

「これは、我らを愚弄した大和屋への報復だ」



止めに入った近藤を全く相手にせず、尚も火を放ち続けるように指示を出す。


その姿は、今までに無いほど冷酷で無に近かった。



「土方さん、どうしますか?」


沖田は黙ったままの土方に指示をこう。


眉間に深い皺を寄せた土方は、芹沢を真っ直ぐに見つめ


「矢央を呼べ」


と、言った。


自分達を一切信用しない芹沢だ、何を言おうが聞く耳を持つはずがない。


しかし、芹沢が可愛がる矢央ならば………



(全く、次から次へと問題を起こしやがるぜ)



闇に舞う火花が、土方の顔をよく照らした。





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