「芹沢はん、何であの子にあんな意地悪しはったん?」


障子を開け、乱れた髪を結ながらお梅は芹沢に問う。


未だに布団に転んだまま芹沢は、先程の矢央の慌てぶりを思い出して笑った。


変に思うお梅の腕を引き抱き寄せると、項に口付ける。


「あいつは変わった女だ。 まだまだ子供だが、心を持ち凛とした強さを持ち、どうしてか惹きつける」

「あら、妬けるわぁ」

「フッ。 女としては、まだまださ。 だがな、あれは良い女になるぞ」

「うちよりも?」



その問いに、芹沢は一瞬、顔に闇を落とした。


「わしにとっては、お主よりも美しいものはない」



その返事に気を良くしたお梅。

芹沢の首に腕を回すと、胸に顔をスリ寄せる。


愛しいお梅を抱きしめ、芹沢は庭の池に目線を向けた。


ヒラリ、ヒラリと木の葉がピチャリと水面に揺れる。



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