「逃げ腰だな。 それじゃ、いつまで経っても勝負はつかんぞ!」
力士と矢央の距離は、一定の距離感を保ったまま。
端から見れば、やはり矢央が怖じ気ついているようにも見えた。
だが、矢央は笑顔を崩すことなく言った。
「じゃあ、あなたから来て下さいよ?」
「なにをっ?」
明らかに挑発していた。
力士は一気に勝敗を決めようと、矢央に向かって手を押し込んでくる。
しかし、素早さが得意な矢央はあっさりと交わすと、力士の背後に回った。
だが、体が大きい割には素早かった力士も、すぐさま矢央と向き合うと、また飛び込んでくる。
「逃げてるだけじゃん…」
攻撃を交わすだけの矢央を見て、藤堂は心配になる。
そんな藤堂の隣では、永倉が真剣な表情を浮かべていた。
「逃げてるばかりかっ」
「なんとでも」
また、攻撃を交わす。
猫のようにすばしっこい矢央を捕まえるのは大変だった。
暫く同じ状況が続き、拉致のあかない攻防戦に力士がピリピリし始めた。
「このっ!」
業を煮やした力士が、腕を広げた、その瞬間――――…
「決まったな」
「え?」
永倉は、にやっと口角を上げた。
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