文久三年、八月。


京の町は燦々と照る太陽と、ミーンミーンと五月蝿い蝉の声に包まれ夏本番を迎えていた。


一日の夜、矢央はある知らせを聞く。


「相撲興行? それって、大坂であった事件の?」

「そうみたいですね。 あの事件では、死傷者も出ましたし、手打ちとして開かれるそうです」

沖田が昼間買って来た菓子をつまみながら、月を眺める。


傍らでは永倉、原田が酒を飲み、井上は寝具の支度を始めていた。


「確か浪士組からは数名警護につくらしい。 んでもって、それで得た金は浪士組に回るって話」

「そりゃいいじゃねぇか! 貧乏を抜け出す良い機会だぜ。 これで、酒が鱈腹浴びれるっつーもんだ!」

「何言ってんの、左之さん。
あんた、新八さんのおかげで芹沢さんから酒毎日貰ってんじゃん」

「ん? んまぁ、そうだな」


チラリと永倉を見た原田だったが、永倉はグイッとお猪口を傾け酒を飲むと、膳に置いた。


「その芹沢さんが、大荒れだ。
当分酒は期待できねぇぜ?」


深刻な表情で言った永倉。



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