「本当に裏切らない。 でも、疑われても仕方ないのは、私が全てを話てないからですよね」


月明かりが矢央を背後から照らす、まるで優しく背中を押すかのように。


屋根の上では、山崎も静かに見守っている。


ふぅと息を吐いた矢央は、ようやく顔を上げた。


皆は、ハッとする。


矢央の大きな瞳からは、涙が流れていた。

音も上げず、静かに泣いていた。


「この時代に来た時から、私はある夢を見るようになったんです……」


近藤達を濡れた視界にしっかりと捉え、全てを話そうと背筋を正した。


「闇の中で、ずっとみんなを想って泣いてる女の子がいて、私はその子に、この時代に連れて来られた……
時々、彼女の気持ちがわかって胸が痛くなって悲しくなって、知らないはずの近藤さん達を、懐かしく感じたり、一緒にいる時間を当たり前のように感じてた」


それは、矢央と少女の気持ちが連動しているからだと、矢央自身気づいていた。


「女の子は、私に言うんです」

「何と?」

「みんなを、守ってって……」


ざわつく近藤達。

そして、近藤達もその少女が誰かを悟った。


もう確実だと思っていいだろう。

矢央の中には、何らかの理由があって死んだはずのお華がいると。


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