「坂本は、お前を攫うつもりらしい。 それは何故だ?」

「知らない」


あれは、坂本が勝手に言った言葉であって矢央には知る由もない。


「矢央君、では質問を変えよう。 彼とは、どのような話をしたのかね?」


「……私の素性を話ました」

「未来から来たことをかね?」

「他人の傷を癒せることもか?」


近藤、土方、それぞれの問いに疲れたような「…はい」と返事する。


すると、二人は険しい顔つきに変わった。


矢央も、それは見逃さなかった。


いったい、なんだって言うの?



「坂本の意図が読めたぞ。
お前は、未来を知っている。それを利用するつもりだろう」

「あり得るな。 治癒能力も、こんな御時世だ、利用価値があるとみてとるやもしれん」



開いた口が塞がらなかった。


利用価値。


坂本が、自分を利用しようとしているなんて、たった数時間しか過ごしていなくても、そんなことをするような人ではないとわかっていた。


浪士組にとっては敵、だから疑う。


それは、仕方のないことかもしれない。


だが、その言葉が近藤達から出たことが矢央の脳天をかち割る程の衝撃を与えた。





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