坂本龍馬との出会いは、思ってもみない波乱を巻き起こした。

矢央が買い出し途中にいなくなったと知らせを受けた土方、近藤はもちろん、あの芹沢も数人を捜索に回した程の一騒動になっていた。



芹沢に関しては、坂本といたことを知っても何も言わず、矢央が無事に帰って来たことに安堵した。


が、近藤と土方は少し捉え方が違った。



近藤の部屋には、土方、沖田、永倉、藤堂、原田といった矢央を捜索した面子が揃っている。

雨に濡れた矢央のサラシを変えるため、観察方の山崎もいた。


「これで、終わりや。 ほんま、治りは恐ろしい程早いなぁ」

「…ありがとうございます」

「ええよ。 ほな、局長、俺は任務に向かいますよって」

「ああ、すまないな」

「いいえ。 では、失礼します」


山崎が去った後の局長室のムードは重苦しい。


近藤はまず、矢央の無事を喜んだ。


「矢央君が無事で良かった。 皆、心配したんだよ」


眉根を寄せた近藤に、申し訳なさから矢央はグッと唇を噛み締めた。


「ごめんなさい」

「怪我は…ねぇんだな?」


これは、土方だ。

その問いに、頷く。


「では、聞かせてもらおうか。
坂本龍馬と、何をしていた?」

「何も…。 永倉さん達とはぐれた後、町を迷ってたら坂本さんが此処まで連れて来てくれただけです」

「それを、俺が信用するとでも?」


グッと、拳を握り締める矢央。

「信用するとかしないとかじゃなくて、何を聞きたいのかハッキリ言ってもらわないと答えようがないじゃないですか」



信用、という言葉がグサリと突き刺さった。

本当のことを言った。

土方達に顔を見せれないようなことなんてしていない。


なのに、土方達の目は何かを疑うようだった。


芹沢のように、笑顔で出迎えてくれなかった。



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