ピチャ…と、水滴が頬にかかり空を見上げる。


雨が降ってきた。


「嘘っ! さっきまで晴れてたのに?」


体を離した坂本は、上着を着直しながら立ち上がると、矢央に手を差し出す。


「この時期は、ころころと天気も変わるぜよ。 雨宿りせにゃならんきに」


坂本の手を取り立ち上がった矢央は、はぐれた永倉と沖田を気にした。


有名人と話し込む間に、かなり時間は過ぎた。


さすがにはぐれた矢央を捜しているだろうし、心配しているに違いない。



早く帰りたい。


そんな矢央の気持ちを察した坂本は、手に取った小さな手をギュッと握り締めた。


「帰りたいか? 壬生狼のもとに」


真っ直ぐ見下ろしてくる双眼。

矢央は、躊躇いもなく頷く。


坂本は、そんな素直な少女に何を思うのか。



「わしはお尋ねもんじゃき。 近くまででいいなら、連れて行ったるきに」

「本当ですか!? お願いします!」


ペコッと頭を下げる矢央の髪には、先程坂本が買った赤い結い紐がチラついている。


フッと笑い、坂本に手を引かれ屯所までの道を歩き始めた。




側まで近づくと、見慣れた景色に矢央の心も弾み、気がつけば坂本の手を引いて歩いていた。

――――グイッ!


「わっ!!」


急に坂本が立ち止まる。


「ここでお別れじゃ」

「あ――……」


これ以上、屯所に近づけば、坂本にとっては危険だ。


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