「矢央ちゃん!! やっと起きたぁ!」


「わっ! わっ!」


三日間目覚めなかった矢央が目覚めると、殆ど寝ずに面倒を見ていた藤堂が抱きついた。


三日ぶりに回復した意識は朦朧とし、体もフラフラなので、この抱擁はキツい。


くらくらする意識で、矢央は藤堂だと知った。


抱きつき魔だ……。


疲れているはずなのに、抱擁を嫌だと思う気持ちはなく、逆に安心する。


藤堂の癖が、先程まで闇の中にいた矢央の気持ちを和らげていた。


「矢央ちゃん、大変だったね。
また、あの変な力使ったんだって?」


「変な力?」

「これだよ」


と、藤堂は布団に横たわる矢央の負傷した頭を優しく撫でた。

出血自体はそんなになかったが打撲痕が酷く、頭に巻かれたサラシは左瞼までに及んでいた。

「私…怪我したんですか?」

「え? 覚えてないの?
否ね、僕も聞いた話だから詳しくはわからないけど、総司の負った怪我を、また矢央ちゃんが背負ったって……」


以前は藤堂だったので、グッと拳を膝の上で握りしめる。


申し訳ないと、藤堂は頭を下げた。


「ごめん。 守ってあげられなくて………
やっぱり、無理を押してでも大阪行きについて行くべきだったんだ」


「藤堂さん………」


ソッと、藤堂の拳に小さな手を乗せる。


片方しか見えない狭い視界の中に、困惑顔の藤堂が映る。


「ありがとうございます。
その気持ちだけで、嬉しい」

「矢央ちゃん……」




.