「二度の無礼……お主ら覚悟はあるのだろうな?」

「はっ! 先に手を出したのおめぇらだろっ!」


住吉屋の前で、浪士組と力士が睨み合い、互いに話し合いでは終われない雰囲気があった。


先手を打って来たのは力士側だった。


八角棒を振り回し浪士組に襲いかかるが、大振りな動きのため身軽な浪士組は素早い動きで、次々に避けていく。


力士と浪士達の乱闘が始まってしまった。





「あーあ、これって喧嘩だよね? 本当に血の気が多いな、この時代の人って」


二階から乱闘を眺めている矢央は、ハアと呆れて溜め息をつく。


どちらにも非があったのだから、謝り合いすればいいのに…と、現代っ子な甘い考えがある。


さらさら喧嘩に参加する気はなかったが、否が応でも参加せざるおえなくなった。


脇差し一つで応戦していた永倉は、たかが力士と若干油断したのか八角棒で弾き飛ばされてしまった。


――――危ないっ!!


体勢を崩してしまった永倉の頭上から八角棒が振り下ろされようとしていた。


素早く二階から飛び降りた矢央は、力士の背後に周り膝を狙い足を振る。


―――ガクンッ!

「ウワッッ!?」


バランスを崩した力士は背後にいた矢央に気づき、倒れ間際に八角棒を振り回した

―――が、それをあっさり体を低くすることで避けると、近くにある力士の頭を両手で掴み地面にグシャッと押さえつけた。

顔面に強い衝撃を受けた力士の体は、ピクピクと小刻みに動くだけで立ち上がれない。


その傍らで、小柄な矢央が力士を一睨みして「武器を持たない相手に武器で戦うなんて最低」と、台詞を吐き捨てていた。


一瞬、周りは茫然となる。


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