沖田は矢央の俯く顔を確認しようと背をかがめてハッとなる。

ぽつりぽつりと、白い頬を滑り落ちる滴。



―――泣いている。



我慢していた涙が溢れていた。

そんなに気にしていないつもりでいたのに、沖田に避けられているかもという不安は、本人が思う以上にきいていたらしい。

この時代に来てから沖田の顔を見ない日はなく、その涼やかな声を聞かない日もなかった。


不安な毎日を、影ながら支えてくれていたのは紛れもなく沖田総司、この優しい青年だ。


たかが一日半でも、構ってもらえなかったのは寂しかったのだ。



「矢央さん、顔を上げてくださいな」

「―――…ふぅぅ…」


冷たい掌が矢央の濡れた頬を包むと、くいっと持ち上げる。

濡れた視界にぼやけて映る沖田の表情は、少し困り顔にも見えた。


「ほらほら、これから宴だというのに主役が泣きはらした顔ではいけませんねぇ」

「ら…ってぇ……うえっ…」

「クスッ。 可愛いなぁ…」


鼻水まで垂らす顔のどこが可愛いのかと、ブスッと頬を膨らませる。

ちょっとした抵抗だ。



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