近藤は芹沢の言葉に頷くしかなかったのだった。


「私が、小姓? 芹沢さんの?」


小姓が何かを尋ねると、身辺の世話をする者だと言われた矢央は


「構いませんよ! それで、今回のこと全部なしに――」

「するわけねぇだろっ」

「――そうですねぇ……ケチ」

「あ?」


ボソッと言った嫌みが聞かれ、矢央はぷるぷると頭を左右に振った。


「お前な、事の重大さを軽んじてんだろ?」


芹沢の小姓になるくらい、何が大変なのか。

家事は確かに得意じゃないけど、精一杯やればそのうち覚えるだろうし、もし嫌気をさされたらお役目御免となるだけ。


だから、土方や近藤が何故そこまで渋い表情なのかがわからずキョトンとなる。


「芹沢さんの身の周りの世話をするってぇのは、お前は常に芹沢さんの側にいなきゃなんねぇ。
てことはだ、今いる安全な前川邸から八木邸に移ってもらうことになるんだぞ」


近藤達が住むのは八木邸の前にある前川邸で、矢央ももちろん前川邸で過ごしていた。

平隊士達は前川邸にいるし、道場もこちらになるが、芹沢一派は酒好き女好きの男所帯。


幼さが残るといえど、年頃の少女をそんな危険な場所に身を置かせる。

近藤は、矢央を見て思わず涙ぐむ始末だ。


「すまない、私が不甲斐ないばかりにっ……」

「え? 小姓って、そんなに大変なんですか?」

「矢央、一つだけ聞いておくが……お前もちろん生娘だよな?」

「なんですか、生娘って」


先程から、彼らの言わんとしている事がさっぱりだ。


生娘がまだ男性と性的交わりをしていない純粋な体だと聞かされた矢央は、奮闘する。



.