その日の夜、矢央は近藤の部屋へ呼ばれた。


その理由は、日中に起きた芹沢とのことだとは予想していた。


「そんな怯えた面をせずともよいから座りなさい」


障子戸からチョコッと顔だけを覗かせる姿に近藤は笑みを浮かべる。


まるで幼き頃の総司を見ているようだと………。


だが矢央は近藤の隣にいる人物を見て、ブルッと体を震わしギュッと障子戸を握り動かない。

それを見て、近藤は隣で険しい表情を浮かべたまま腕を組んでいた土方を見やる。


「歳よ……その眉間の皺どうにかならんのか?」

「ならん」


即答だったことが、土方が相当激怒していることを表している。

こっ、怖くて入れない……。


「矢央、さっさと座れ!」

「ヒッ! はっ、はいっ!」


やはり鬼副長、女子供に対しても態度を変えることはなく、ずっと廊下にいる矢央に鋭い睨みで命じた。


飛び上がって部屋に入り、近藤、土方の前に小さく体を曲げ正座する。


「てめぇ、えらいことしでかしたじゃねぇか」

「……ナンノコトデショウ」


冷や汗が背中を伝うのは、土方の口元は笑っていたが目が笑っていないから。

何もかもバレているのに、思わずしらを切りたくもなる。