何とか事はおさまった。

意外にも、芹沢鴨によって。



「矢央ちゃんっ!?」


騒ぎがおさまり、藤堂は矢央にまたもや抱きついていた。

多分、無意識なのだが、それに眉を寄せたのは永倉だった。


「平助、お前はいつから女慣れしやがったんだぁ?」

「は? なに言ってんの、新八さん」

「…………」

「…………」


永倉、藤堂の言葉なき火花の間で矢央はボーっと芹沢を見上げていた。


芹沢は矢央の視線を優しい目線で見下ろし、クスっと小さく笑うと―――



「間島、お前は武芸の才があるようだな。 女の割に素早い身のこなしは天晴れであったぞ」

「あっぱれ?」

「立派だと言う意味だ」

「立派……えへへ、ありがとうございます!」


怒られるとヘコむ、ほめられれば素直に喜ぶ。

裏表なく真っ直ぐで素直な様子に、芹沢は藤堂に抱き締められたままはにかむ矢央の頭にゴツゴツとした手を乗せた。


頭を包む温もり。

悪くなかった。


最初は怖くて、威張ってて、嫌な人かもしれないと思ったが、芹沢は矢央にとっては優しい眼差しを向けていて。


そんな芹沢に、山南は「意外だ…」と何度も呟いていた。



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