駆け抜けた少女【完】



「貴様っ! 無礼も大概にせぬと斬り捨てるぞ!」


芹沢に対しデカい態度の矢央を見て、新見は刀に手をやった。


とうとう本格的にヤバい状況になり、山南や藤堂も庭におり新見を宥めようとする。


「まあまあ、新見さん。
彼女はまだまだ子供故に過剰に反応してしまうのですよ……ですから此処は穏便にですねぇ」

「そうっすよ! 女なんて斬ってもなにも良いことないですよ!」


子供……女なんか……。


山南と藤堂は上手く言ってるつもりだが、それが通じているのは新見にだけ。


矢央としては、侮辱と取れる言葉に口角がヒクヒクとなっていた。


「……おい、騒ぎを―」

大きくするな、と永倉が制する前に…。


「子供とか女とか、あんたらさっきから女性に対して失礼だって言ってんの!
それにおっさん! このくらいで抜刀するの? すっごく小さい男なんですねっ!!」

「な…な……っ」



もう駄目だと、誰もが思う。


堪忍袋の緒が切れた新見は、とうとう抜刀してギラッと光る刃を矢央に向けてしまっている。


「斬ってくれるっ!!」


新見が刀を振り上げた瞬間、矢央は新見の胸の前に素早く移動する。

その素早さに驚いた新見が出しかけた足を後ろに退いてしまい、その瞬間ガクッと体が傾いた。


「…なっ……」


――――バサッ!

その隙をしっかり見ていた矢央は地を蹴り上げ、両手で新見の肩辺りの着物を掴むと

一気に引っ張り上げ、そのまま頭から被らせてしまった。


「なっ、なにをするかっ!?」


視界が着物で覆い隠されふらつく体に、とどめとして矢央は屈み込むと、ザッと新見の膝裏めがけ足を払った。


「う―…わわっ!?」

呻き声は、尻餅をついている新見から聞こえてくる。


山南、藤堂、永倉、芹沢は、目を見開き固まっていた。


ものの数秒だった。

自分よりも大きな男を、少女がこんないとも簡単に尻餅をつかせたとなっては、面子丸つぶれ。


新見はグイッと着物をはだけさせ、すぐに立ち上がった。


.