「騒がしいと思えば、新見に永倉…山南さんに藤堂君ではないか。ん? はて…その女は?」
芹沢鴨である。
威風堂々とはまさにこの男に合う。
水戸藩出身の壬生浪士組筆頭局長芹沢は、同じ芹沢一派以外からは毛嫌いされた存在。
武士風を吹かせ、好き放題暴れまくる暴君で、京の町で壬生浪士組を恐ろしい存在とイメージを作らせる一つの原因がこの男にあった。
芹沢は鍛えるためなのかお気に入りなのか常に鉄扇を愛用していて、その鉄扇を矢央にビシッと向けた。
「見ない顔だな?」
「芹沢さん! この女、私に対し失礼極まりない振る舞いをしたのです」
「ほお――……」
芹沢の隣にささっと寄り、まるで告げ口のような新見の態度に矢央はムッと眉を寄せた。
新見からゆっくりと視線を矢央に移した芹沢は、無表情のまま矢央を見定めていく。
新見と全く同じ態度の芹沢に、やはり腹を立てる。
ジロジロと見定めれる矢央の我慢の限界もここまでで、藤堂の束縛から難なく抜け出すと、裸足のまま庭におり、
「あっ! ちょっとぉぉぉ!」
藤堂の呼び止めの声虚しく響くなか、永倉の隣に仁王立ちになり。
「ちょっとおじさん、先に失礼なことをしたのはこの人ですから!だいたい、さっきからジロジロ見て一体なんなんですかっ!?」
生粋の日本人である矢央は、この時代で自分が浮く容姿だと気づいていなかった。
顔は日本人だが、やたら目にとまるキラキラと光る黄金色の髪が芹沢達に訝しがられている要因だが
まさか自分が、異人かと怪しまれているなんて露にも思わない。



