今は優しくされること自体つらいのに。

何でよりによってこんなときに二人きりなの?

二人きりっていっても、周りには人がいるから気も抜けないし。

もし。

もしもこの気持ちを紘翔に言ったとしたら、こんな風に考えなくてすむの?


もう…わかんないよ。

「………」

私には気づくはずもなかった。

紘翔がどんな顔で私を見てたかなんて。

「紘翔、私あれが見たいわ」

そう、私は今日も演じきればいい。

紘翔の婚約者である、優しい天凪を。

優しい微笑みで紘翔を見上げて、ねだってみる。

「あぁ、どれだい?」

そうすればいつもの学校での紘翔が答えてくれる。

偽りの優しさで。

嘘の笑顔で。