「見て、天凪様と紘翔様よ」

「まぁ、いつ見てもお美しいわ」


財閥や、資産家たちの子息達の多くが通う、橒祇-キサギ-学園。

橒祇学園には、いつでも噂の的になっている二人がいた。



その一人は私、咲煌寺 天凪-サクオウジ タカナ-。


「天凪、躓(ツマヅ)きでもしたら大変だ。しっかり僕の腕に摑まっているんだよ?」


ほんの少しの段差を目の前に、私に心配そうにそう言う彼は翼牙崎 紘翔-ヨクガサキ ヒロト-。

私の婚約者。



「いいわねぇ、いつも仲がよろしくて。」


「あら、伊織。ごきげんよう。」


隣から話しかけてきたのは、美登原 伊織-ミトハラ イオリ-。私の一番の親友。


「美登原さん、今日は一段と綺麗ですね」

「ほんと、ダイヤモンドの髪飾りがよく似合っているわ」

紘翔と私はいつものようにあいさつを返した。