千代はナオのリビングソファに座って、お茶をすすった。
「あ~おいしい。ここは病院と家は完全に分かれているんですね。」
「ああ。まぁ・・・ここでは突然、化け物の襲撃もないしね。あはは・・」
「確かに。あははは。入院患者さんがいるところで仮眠なんて考えられないかも。」
((どうしよう・・・家を出る前はいろんなこと聞きたいって思ってたのに、会ったら何をいったらいいのかわからないよぉ。))
千代が言葉に悩んでいると、ナオは千代を後ろから抱きしめてこう言った。
「自分が贄だとわかってから、ずっと不安だった。
何でもしてあげようって気持ちは会ったときからずっと思ってたけれど、契約なんて強引な方法でしかつながりがないと思うと悲しくて、君の師匠といったルイゼにも嫉妬したんだ。
どうして、僕は贄になってしまったのか?って。
あの世界で、姿かたちがなくなってしまってから、ひたすら祈り続けた。
それしかできなかったからだけど、ただ、どうしても君に会いたくて。
会えて本当に、よかった。うれしい。」
「私もうれしい。あのとき・・・先生が消えちゃったあの日は呪文を唱えているときもずっと悲しかった。
無我夢中でみんなを助けたいって思って、頑張り続けたけれど、意識はすぐに消し飛んでしまったみたいで。
もう、死んじゃっていいって思ってた。死んじゃった方が魂になって先生に会えるかと思ったくらいだもの。
師匠が言ったとおり、魂も意思の力で奇跡が起きるのね。
まさか、私の地元で会えるなんて・・・。
あの・・・ね、突然なんだけど、今、先生には彼女とか決まった人っている?」
「いたら、こんなことしてしゃべってないと思うけど・・・。」
「あ・・・そうだよね。あはは・・・何いってるんでしょうね・・・私ったら。
やっぱり、どこか不安なのかな。先生また消えちゃったらとか思ってしまいそうで。」
「心配してくれる?」
「うん。」
「じゃあ、新たに契約しなおそうか・・・。」
「えっ・・・ええっ!!!」

