開かない扉

ナオとルイゼがもどると、千代が心配そうに手を胸の前で握りながらつぶやいた。

「何を話してたの。私に言えないことなの?」


「いいや。贄さんに・・・いや失敬。ナオさんにこれから、化け物や危ない神官だのが増えてくるから、千代をしっかりと守ってくださいと頼んでいただけさ。」


ルイゼは笑いながら他人事のように言った。


「師匠は守ってくれないの?」


「俺は・・・もうちょっと調べ物に出かけてくる。
ま、おまえも知ってのとおり、俺はナオさんの使う魔法もこなせるし、その他の魔法も使える。だから、何かあればすぐに飛んで帰って来れる。
だから、心配することなんて何もない。そうだろ?」


「う、うん。・・・・・」


「どうした?泣きそうな顔して・・・俺のことがそんなに心配?」


「ちがいますぅ!私がもっともっと魔法を使いこなすことができて、いろんな呪文を解読できれば師匠に手間をかけさせることがないのに・・・って思って。」


「ナマイキなこと言うな!俺はどういう魔法使いだって自己紹介したんだったっけ?
神様直属の・・・だからな。この世界の崩壊や神の暴走は俺たちがもともとなんとかしなければならない仕事だ。
とばされてきたおまえたちとは違う。
気の毒なのはおまえの方なんだよ。わけもわからんまま救世主ってな・・・。

あ、ほら、おまえの大切なヤツ、帰ってしまったぞ。」


「あ、せんせ・・・あ~~~ん! じゃ、師匠また近いうちに寄ってくださいね。」


「ああ。またな」


ルイゼが飛ぼうとしたときだった・・・。


「うっ・・・足がうごかん!・・・なぁ~~~んちゃって。こういういたずらはやめてくれないかな。おじょうさん?」


「あら、たぶんとは予想してたけど、さすがね。優秀な魔法使いさんは。
途中まででもいいから、私も連れてってよ」