開かない扉


千代がナオに指を見せようと、手のひらを上にしてナオの手の上に置いた途端、一瞬にしてやけどの痕が消え、つるつるのきれいな手になった。


「うそっ!でも・・・っ・・便利だねっ」


「う、うん。呪文もイメージさえもしていないというのに、触れただけで?」


「触れただけで、私、きれいになっちゃうのかな。うふふふ。」


「千代ちゃん、あんたうら若き乙女なんだから、そういうイヤラシイ笑いしちゃダメっ!」


ゼアは思わず、ナオの前に立ちはだかった。


「ぜ、ゼア?何で僕の目の前に立つの?」


「用事がすんだらさっさと仕事!・・・ベタベタするのは人がいないところでしなさい。
傍から見てると、援助交際の相手くらいに見えちゃうんだから。」


「た、たしかに。」


ナオが千代に診療所の中へ入るように言おうとして千代の方を見ると、千代がまだ赤い目のまま腕をかまえていた。


「千代?」

ゼアとナオもあわてて、警戒した。

次の瞬間、地面の下から大蛇が千代を突き上げるように飛び出してきた。


「きゃぁーー!」

大蛇に突き上げられ空中に飛ばされた千代を神官の姿をした男が受け止めようとしている。


「あれは・・・オーヴィア?連れ去ろうというのか?そうはさせるか!」


ナオはオーヴィアの方に移動しようとしたが、オーヴィアは以前よりも強力な魔法で岩石を飛ばして襲ってきた。


「魔法を自在に扱えるようになって契約も済んだようでなによりですね。
ここからは、その力を有効に使ってもらうため、私ときてもらわなくては・・・」


「やだぁ!あ~~~ん、おちるぅ!イメージするのが間に合わないよぉ!」